薩摩鶏ぢどり亭でほろ酔い-85

酒場

秋風に 炭の香りに誘われて 暖簾をくぐるぢどり亭・・・。
「久しぶりー!」といつもの挨拶が出迎えてくれる。このお店でしか会わないけれど、まるでずっと前からの知り合いのような店長の笑顔に、思わずこちらも「ただいま!」と言いたくなる。
6、7年通っているが、季節が変わる頃にふと立ち寄りたくなるのは、ここで味わう焼き鳥と、変わらぬ温かさが恋しくなるからだ。

ぢどり亭は全国展開しているチェーン店だが、この店には確かに店長の個性が息づいている。出迎えてくれる挨拶の一言、時折ふるまってくれる創作メニュー、どれもが、ただのチェーン店ではなく「この店でしか味わえない」特別な空気を作り上げている。

お決まりのカウンター席に腰を下ろせば、忙しそうな店長の姿が見える。来店頻度は多くないせいか、どこか懐かしさに心が踊らされる店だ。

ぢどり亭といえば、やはり外せないのが「皮焼き」。香ばしい香りとパリッとした食感、噛めば噛むほどじわりと旨みが広がる逸品。そして、「もものたたき」これもまた名物で、地鶏の濃厚な旨みと絶妙なレア加減が口の中に広がる。さらに、やみつきになる「南蛮フライ」たっぷりのタルタルソースが決め手で、ひと口ごとに幸せな気持ちに包まれる。

そんな料理に合わせる酒といえば、やはり焼酎「霧島」。この店で飲む「霧島」は、香ばしい地鶏の味わいを引き立て、口の中にしみわたる深い旨みが心地よい。焼き鳥と焼酎が奏でる絶妙なハーモニーに酔いしれる。たまりません。

ここに通う楽しみのひとつが、店長の創作メニューの試食をさせてもらえること。今回の創作は「きなこ豆腐」。一見デザートのようだけれど、きなこの香ばしさと豆腐のなめらかな食感が絶妙に合わさり、不思議と「霧島」にもよく合う一品だった。こうした遊び心ある料理に出会えるのも、この店の魅力だ。

そういえば、コロナ禍の頃の店長は、今とはまるで別人だった。当時はお店も苦しい状況で、口数も少なく、いつもの元気な挨拶もなかったように思う。けれど、久しぶりに顔を合わせたとき、そんな辛さを一切感じさせず「また来てくれてありがとう」と笑ってくれた。今でこそ明るく振る舞っている店長の笑顔には、あの時を乗り越えた強さがにじんでいるようで、こちらも自然と頭が下がる思いだ。

この店のカウンターは、なんとも言えない居心地の良さがある。まるで長年通った家のような安心感を与えてくれる場所だ。いつもの席に座ると肩の力が抜けていく。このカウンターの雰囲気は何にも代えがたい。

少し年を取られた店長。あのコロナ禍を乗り越えてきた苦労が、表情に少しだけ影を落としている気がした。いつまでも元気でいてほしいと思う。これからも我々「酒場アラシーズ」をあたたかく受け入れ、このぢどり亭を守り続けてほしい。そう願うばかりだ。

店を出るとき、店長はカウンターの奥で炭火を見守りながらも、手を止めずに「またねー!」と声をかけてくれる。調理に集中しながらも、最後の最後までこちらを気にかけてくれるその姿勢に、思わず「また来るよ」と心の中で応えた。

秋の夜長、ぢどり亭で交わされる小さな挨拶と焼き鳥の物語に、心から温かさを感じた夜でした。ぢどり亭三ノ宮店の店長ありがとう。

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