コンサルティングの仕事は「話を聴く」ということが基本になります。当たり前の話ですが、経営の状況を共有させて頂くにあたり、傾聴から始まります。
この聴くという行為ですが、決して聞くではありません。聴くは能動的であり、聞くは受動的であります。メモも取りたくないくらい聴くことに集中します。集中することで質問が生まれます。そして、そのキャッチボールが生まれます。時にジャズのセッションの様に進んでいきます。根本にあるのは聴く力であると考えます。
僕が思う聴く力とは、3つから成り立っています。1つ目に、相手が真剣に話したくなるくらい、真剣に聴く。ということです。これは、お話を聴く姿勢のことです。あなたのこと、会社のことに興味があるんだ、好意を持っているんだ。という気持ちが目に現われているかです。これは雰囲気で相手に伝わるのだと思います。
2つ目に相手の話を肯定することです。相手が折角お話をしてくれたことにきちんと敬意を表するがごとく、肯定すべきなのです。決して、自身の意見と相違があったとしても先ずは肯定です。否定からは何も生まれません。肯定して共感することが次の言葉を生むことだと思います。
3つ目に、一方的に自分のことばかりを話さないことです。下手な営業マンの売り込みのごとく、自分の言いたいことばかりを話してポジションを上に立とうとするケースがあります。現代語でいうマウントをとるということでしょうかね。最悪ですね。
ということで、聴く力とは聴くこともさることながら、受け止めて、話すこともセットなのです。シンプルにまとめますと、相手に興味を示す。相手を共感する。自分の我を出さない。この3つがセットで「聴く力」が成り立つと考えます。
所謂、コミュニケーションスキルですね。ただ相手の内にあるものを引き出そうとか考えてしまうと、3つ目の罠に居陥ってしまいます。時に話が脱線していくくらいがちょうどいいと思っています。
「自分の感受性くらい」という詩が好きで、詩人茨木のり子さんの詩を時に読み返します。彼女の詩は、はっと我に帰るというか、自分が落とし穴にはまっていることに気づかされます。詩は読む時期で捉え方というか、自分への入り方が違ってきます。日々の振り返りの判断材料に最適です。机の手の届くところに置くようにしています。
その数ある詩の中で「聴く力」という詩を残してくれています。こちらの詩もほんと、コミュニケーションの在り方、相手をおもんばまることの大切さを気づかされてくれます。解釈はさまざまと思います。一言でいうと、受け止める力の大切さなのかもしれません。
以下、詩の全文です。明日は月曜日、月末を乗り切りましょう。
「聴く力」 茨木のり子
ひとのこころの湖水
その深浅に
立ちどまり耳澄ます
ということがない
風の音に驚いたり
鳥の声に惚けたり
ひとり耳そばだてる
そんなしぐさからも遠ざかるばかり
小鳥の会話がわかったせいで
古い樹木の難儀を救い
きれいな娘の病気まで直した民話
「聴耳頭巾」をもっていた うからやから
その末裔(すえ)は我がことのみに無我夢中
舌ばかりほの赤くくるくると空転し
どう言いくるめようか
どう圧倒してやろうか
だが
どうして言葉たり得よう
他のものを じっと
受けとめる力がなければ
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