昨日の甲子園の第4試合に涙した。西東京代表の早稲田実業と島根代表の大社高校の戦いである。一高校野球ファンとしてテレビ観戦していた。ベスト8争いとなると、なかなか見ごたえのある試合となる。本試合も例外ではない。名門校チームと、前の試合で壮絶に勝ち上がってきたチームとの対戦だ。
9回裏、何かが起こりそうな予感でテレビ画面に釘付けとなった。延長のタイブレーク時には自然と涙が溢れ、試合終了には号泣となった。なんという名勝負だ。情熱のぶつかり合いはこれほどまで美しいものかと、球児たちに感謝の気持ちでいっぱいになった。
当たり前だが、どちらかが勝ち、どちらかが負けとなる。結果は延長11回裏に、島根代表の大社高校のエースのサヨナラヒットで試合が決まった。149球投げた後の自身のバットだ。まるで、シナリオがあるかのようなラストシーンだった。それまでの回が11回裏のための伏線の様に見え、試合終了のサイレンと共にエンドロールが流れだした気がした。
どちらが勝ってもおかしくない。チームとしての力の差は互角、もしくはテクニカルの面では名門早実が勝っているかもしれない。けれども勝利の女神が大社に傾いたのだ。
スポーツの世界は「心技体」のバランスだ。すべてが一定の質の担保を必要とする。「技」は野球スキルを前提としたテクニック。これは練習量と努力による賜物だろう。「体」は野球を続けるフィジカル面だ。強い肉体と健康を維持しなければならない。これも鍛練が必要だ。努力の賜物だ。そして、「心」のメンタルの部分であるが、私的にはこういった甲子園という大舞台において一番割合を占める、強さがいるのではないかと素人ながら思ったりする。メンタルが強く維持できることで、練習を積んできたテクニックやそれを支えるフィジカル面が発揮できるのではないかと考えるからだ。
このメンタルの強さについて、負けとなってしまった早稲田実業高校の球児たちになかったという話ではない。少しだけ大社高校側のメンタル力に、私たちに見えない力がはたらく要因があったのかもしれないなと考えたりした。このメンタル力=心の力という「逆境であっても、絶対諦めないポジティブな強い気持ちを保つ力」かなと思うのですが、他にも「どんな時も仲間を大切に思う気持ちの強さ」もあったりするのかなと思う。7回の表に大社高校は外野手のエラーで勝ち越し点を与えてしまうのですが、その際のエースの立ち居振る舞いが美しすぎた。グランド上では外野に向かって気にしないでいいという大きなゼスチャー、ベンチに戻ってはエラーをしてしまった仲間を抱き寄せるかのような仕草をし、耳もとで何か言葉を伝えている仕草。なんという仲間思いなのか。
自分のエラーで負けてしまう可能性のある仲間に対してポジティブな言葉を発していたのだろう。エースはきっと、その言葉を自分にも言いきかせ、勇気づけていたのかもしれない。そう考えると仲間を大切にできる強さもメンタルの強さの一因なのかなと思ったりした。
この試合、島根在住の友人とLINEをしながら、テレビ実況を見ていた。試合後、その友人曰く「神がかっている」と自県代表校を褒めちぎり、大盛り上がりしていた。確かにそうだな。1回戦からの勝ち上がり方、今回のラストシーンまでの伏線が美しすぎる。出雲大社のお膝元でもある高校だ。そう、「神様のおかげ」だと言いたくなる。ただ、早稲田実業の監督、球児の勇姿を目の前に神さまの力がはたらいたとすませてしまうのは、何やら心がざわざわしてしまう。
またまた、私のような素人がメンタルの強さが勝ちを招いたと勝因を理由づけても失礼な話だ。ただ少しの気の流れの傾きの違いはあったのは確かだ。大社高校の32年ぶりの甲子園切符をつかんだ、これまでの努力。選手・監督はじめ、応援団・関係者の方々が一枚岩となった仲間意識。そのような軌跡に少しだけ神様が手を差し伸べたくなったのかなと思ったりします。差し伸べたくなる相手に相応しい球児たちだったのかもしれない。けれども、何度も言うが、早実の球児がそうでないと言っているわけじゃない。これは、早実球児たちがもっともっと強いチームになるための伏線なのだと思う。
ここ一番で、出雲の神の力をはたらかせた大社球児たち、明日からの物語も野球ファンを感動させてくれるだろう。両チームの球児たちに感謝。ありがとう。
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