新大阪駅の裏側の守り神-73

仕事

先日、新大阪駅の南側の路地をぶらりと歩いていたとき、JRの線路沿いに信楽焼きと思われる狸の置物を見つけました。その背丈はおおよそ100センチほどで、新大阪駅を見つめるように佇んでいました。

私は普段、事業者様の訪問には電車を利用し、最寄り駅からはできる限り歩くようにしています。この日は、兵庫県の宝塚南口駅、大阪の南森町駅、そして西中島南方駅を最寄りとする事業者様を訪問しており、狸の置物を見つけたのは、西中島南方駅の事業者様の訪問帰りのことでした。

西中島南方駅は、新大阪駅の1つ手前に位置しています。新大阪駅は大阪の玄関口とも言える大きな駅ですが、駅を降り立つと大阪駅周辺のような賑やかな繁華街はなく、ホテルやオフィスビルが並ぶビジネス街の雰囲気があります。しかし、少し路地に入ると民家も点在しており、下町の風情が残っています。

新大阪駅の南側は「駅の裏側」とも呼べる場所で、静かで人通りも少なく、車もあまり通りません。その裏手にはJR西日本の網干総合車両所があり、普段目にすることの少ない古い型の電車や特別な車両が静かに停まっています。

私が歩いていた歩道と車両所の間には高い金網があり、その先には新幹線が行き交う光景が広がっています。しかしその場所は、光と影で言えば「影」にあたるような、どこか寂しさを感じさせる雰囲気です。

そんな中、金網越しに見えたのが、あの狸の置物です。こちら側からは正面を見ることができませんが、その後ろ姿はまるで新大阪駅を見つめ、駅の安全を祈願しているようにも感じられました。信楽焼の狸は、もともと福を招く縁起物として知られています。もしかすると、この狸も新大阪駅の無事と繁栄を願って、ここに置かれているのかもしれません。

信楽焼の狸には「八相縁起」と呼ばれる特徴があります。笠、大きな目、笑顔、大きなお腹、徳利、太い尻尾、通い帳、金袋の8つそれぞれに意味があり、笠は災難を避けて身を守る、大きな目は周囲を見渡し正しい判断を促す、笑顔は愛想よく商売繁盛を招く、大きなお腹は冷静さと大胆さを象徴し、徳利は人徳を表す、太い尻尾は「終わり良ければ全て良し」を意味し、通い帳は信用第一、金袋は金運を示します。これらの縁起が揃った狸はまさに「福を呼び込む象徴」です。

この狸も、大きな目で周囲を見渡し、笠で駅を守り、いつも笑顔で乗客を迎え入れてくれる存在のように感じられます。大きなお腹のように大胆な経営判断を行い、徳を積み重ね、信用を勝ち取り、それがやがて繁栄をもたらしてくれるのです。そして、何よりも「1日無事故で終われば全て良し」という精神が伝わってきます。

見れば見るほど、この狸が新大阪駅の守り神のように思えてきます。暑い日も、雨風が強い日も、黙々とこの大きな駅を見守り続けている狸。その力強さとたくましさに、ただただ感謝の念を抱きます。8つのパワーすごいですね。日々の隙間時間にこのような発見が嬉しく思います。

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